救世主現わる
モスクワ駅(モスクワ駅というのは存在せず、「モスクワ行き列車」という
のはモスクワ市内にある数カ所の、とある駅行きのこと)の構内で不安な夜
を一夜過ごした。いきなりホームレス状態である。
まったく最近のニュースを知らない僕たちは、たまたまキルギス人と通じな
い言葉をなんとか身振り手振りと地図を使ってコミュニケーションを図りつ
つ、持参したビールで乾杯し、朝を待った。
寝不足でめちゃんこ疲れ気味。
朝5時頃、駅構内は動き始めた。
それでもまだ日本大使館は開くわけがない。
そこで、5時間の時差がある日本なら既に連絡が着くはずと
日本の旅行社に連絡をとってみた。
全て個人旅行なので、旅行社に手配はするつもりはなかったのだが
ロシアだけは、旅行社のバウチャーがないとビザすら発行してくれない
お国柄のため、お世話になっていたのだ。
電話が繋がった。とにかく状況を説明しなんとか対応してもらうことに。
こりゃラッキー!
待つこと数時間後に、電話がかかってきた。
どうやら、とても危ない状況にあるという。そして、すぐに処置しないと
いけない状況にあるらしい。
そこで、空港でビザの延長を依頼し、うまく行けばそのままタリン行きの飛
行機で出国できるかもしれないらしい。
そして現地のスタッフが迎えに来てくれるとのこと。
これはありがたい。いきなり急展開でないか。
なんだか明るい光が見え始めた。
そして待ち合わせ場所に現地スタッフのエレーナさんと合流。
お~ナイス トゥ ミーチュー エレーナ~。
日本に何度も滞在したことのある日本語ペラペラの
ロシア人のご婦人である。
なんでもロシア抑留問題に取り組んでいらっしゃって
日本で本も2冊ほど発行しているお方が、僕たちの行く末を占ってくれる。
「安心してください」との暖かいお言葉。
もう、大船に乗ったつもりで勝手に甘えちゃいます~。
エレーナさんの旦那さんが運転する車で一路空港へ。
空港内に外務省の一部署があり、そこでビザの延長をしてくれることがある
らしい。
この後の作業は、ネットにも歩き方にも恐らく載っていないだろう。
用意したのは
・列車チケット(乗ったけど降ろされた時のチケット)
パスポート写し(まさかこんなに早く使うことになるとは)
嘆願書(エレーナに書いてもらいました)
出国用チケット(空港の旅行会社で購入)
一人当り25ドル(ビザ発行手数料、米ドルで)
で、MFAの係官と交渉。
9時過ぎから手続きを始めてから、長く感じたが目出度く12時前には
ビザが降りた。
出国できる~。やっほいやっほい~。
エストニアに行ける~。
スパシーバ、エレーナ~。と握手握手。
エレーナは「まだ何かしてあげることはありますか?」
僕「またトラブルがあったら連絡します。」
エレーナ「これ以上のトラブルはないから大丈夫」
僕「ありがとう、今度はモスクワでなく日本でお会いしたいです。」
エレーナ「あ、トラブルがあったらここに電話してきて」
お互い、どこまでも不吉な冗談を言い続けるのだった。
こうして陸路だけでのユーラシアの旅は、あっという間に飛行機を使って
エストニアはタリンに到着するのだった。
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