2011年2月10日木曜日

冷凍バスはつらいよ


僕らは常夏の楽園のクラビを出発して
猥雑な街、バンコクに向かうことにした。
クラビでは12日間宿泊したので、ビザが足りなくなる。

飛行機での入国は30日まではビザなしでいけるのだが
陸路での入国の場合は15日間以内なのだ。

既に13日経っているので僕らは、一度マレーシアに出国し
再び入国することによってビザの問題を解決することにした。

何しろこの旅で、一度ロシアでオーバーステイで冷や汗をかいているので
もう一度冷や汗はゴメンなのである。

ハジャイまでは、乗合ワゴンで。さらにその先は。。。
ハジャイで空になった乗合ワゴンが別料金でサダオという
国境の町まで行って折り返してくれる。
僕らはサダオでそのワゴンから降りると久しぶりに
国境を徒歩で渡ることにした。
国境を徒歩で渡るのはトルコからイランへ入国する時以来だ。

あの時は、朝一番でめちゃめちゃ寒かったのを思い出した。
積雪で遅れたバスはイラン国境近くに着くが、そこからは
乗合バスかタクシーしかなく、乗合バスの運行までは
まだまだ朝が早すぎた。

そこでタクシーの運ちゃんが営業してきたのだが、
当然ながらバスより運賃が高いので、乗らなかった。
他の客は2人のイラン人だけ。
彼らもシェアして安くなるなら乗ろうという感じだが
僕らが、頑として値段に応じない。
そこで、そのイラン人がタクシーの運ちゃんに
「安くしてやれよ」みたいな話をしていたみたいで
タクシーの運ちゃんが僕らの言い値に応じた。
これがトラブルの始まりだった。

国境に到着したタクの運ちゃんは、そのイラン人たちに
僕らが値切った分の差額を請求したのだ。
そして乱闘が始まった。火蓋を切ったのは
タクの運ちゃんでいきなり手を出したのだ。

空気が張り詰めるほど厳寒のトルコとイランの国境で
タクの運ちゃんとイラン人二人のファイティングが繰り広げられた。
トラブルに巻き込まれて難関と言われるイラン国境を越境できなく
なるのを避けて、黙って逃げ出したい気持ちではあるが
当事者であり証人であるという思いから、遠巻きに見守るしかなかった。

その国境は厳重を極め、数度の面接と所持品の開封チェックに
指紋のプリンティング(手のひらまで)まで行われた。

そんな寒々として厳重なイラン入国を思い出しながら
僕らはタイからマレーシアへの国境をダクダクと汗を流しながら
徒歩で渡った。その間数十分。
往復でも30分もかからない。
国境付近にはこれっぽっちの緊張感はない。
ただただ暑い。
往復イミグレーションでスタンプを貰っていざバンコクへ。

ワゴン車でハジャイまで戻り、19時発のバスを待つ。
ハジャイ発バンコク(BKK)行きのバスはかなり多く、
次々とバスターミナルにバスが着いては、ほぼ定刻で発車していく。
しかもそのバスはどれも豪奢な構えで、ほとんどが2階建てバスだ。
これはトルコ以来のラグジュアリーなバス移動ができるのではと
期待の胸は膨らむ。
トルコのバスはネクタイをしめたコンダクターが乗り込み
軽食やらドリンクを振る舞い、テレビや映画を鑑賞しつつ
バスによってはWiFiにも接続できるというサービスぶりなのである。

乗客がバスのプラットフォームに集まってくるが、出発の10分前に
なってもバスが来る気配がない。
放送では何かをアナウンスしているようだが、現地語なので
なんだかわからない。
他の真新しいバスはどんどん発着するが、僕らのバスは
出発時刻を過ぎてもやってこない。

結局1時間遅れでやってきたバスは、どうしてこんなに
ボロいバスなんだと、みんなガックリと肩を落としたのが
僕にも痛いほどわかった。



タイの長距離バスはとにかく寒い。
実は数年前にチェンマイからバンコクまでの夜行バスで
体験している。
その寒さは想像を絶し、乗り込む現地人はジャンパーを
羽織ったりセーターを羽織ったりするくらいで、バスでは
ブランケットを配るのが当たり前になっている。
が、その頃その寒いバスを知らなかった僕は、Tシャツ1枚という
格好で乗り込んだ。
朝方バンコクに到着すると風邪はひくは、お腹は痛いはで
ひどい目に遭ったのを思い出す。

あの冷凍バスを思い出しているのに、乗り込んだ僕は
Tシャツに半ズボンにサンダルである。
車内は既にキンキンに冷え込んでいた。
寒いので何かをしようという気にはなれず、すぐに寝るのだが
寒いので目が覚める。
ミャンマーで買った腰巻のロンジーで体を包み、さらに
ブランケットで包み、シートでいわゆる体育座りのままである。
時には正座したまま寝る。寝返りの代わりである。朝までである。


タイなど(マレーシアでも)の長距離バスが何故こんなに
冷房をガンガンかけて冷やすのかと疑問を感じずにはいられない。
もちろん現地の人もむちゃくちゃ寒そうにしているが
誰一人文句を言わず、ブランケットにくるまっているのだ。
いくつかの説を聞いたことがある。
1.暑い国なので、とにかく冷やしまくることが最高のサービス
ということでサービスのひとつという説。
2.暑い国なので、暑いと運転手が眠くなってしまうので、運転手のために
キンキンに冷やしておくという説。
3.冷房の温度設定がなく、ONとOFFしかない、という説。
さ、どれでしょ?

バンコクに到着しバスの外に出ると、とろけるほど暖かかった。
さ、カオサンに向かうぞ!

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